クリニック ページ   VOL.1 1997年秋季号 (創刊号)    

 

 近年のアレルギー疾患の増加には目を見張るものがある。例えば、小児喘息を取ってみると、喘息児の占める割合は、昭和40年代では、1%程度だったものが、昭和50年代では3〜4%、現在では7〜9%と増加している。喘鳴を有する程度の者も含めると13.3%に達すると言われている。アトピー性皮膚炎では、現在乳幼児の4〜5人に一人がアトピー性皮膚炎と言われ、またアレルギー性鼻炎の症状を起こすスギ花粉症は最たるもので戦前は皆無であったものが現在は大人の10%、10人に一人がスギ花粉症と言われている。
 このように全てのアレルギー疾患が近年急増してきているのです。アレルギー反応は1つの体質的な反応です。同じ人間でありながらなぜ昔と今で肉体の反応に変化が起きてきてのでしょう。言える事は、アレルギーの成立には後天的な要因が大きいと言う事です。
 そこで増加の原因を考えると生活習慣の変化と肉体の反応性の変化に集約されると思われます。生活習慣の変化では生活環境の変化、食生活の変化、生活行動の変化、精神的ストレスの増加などが挙げられる。また空気汚染に代表される公害も増加原因の一つと考えられる。肉体の反応性については、抗原を認識する反応の変化、またアレルギーが引き起こす反応性の変化が考えられる。しかし、一番の問題は我々現代人の生活習慣の変化であると思われます。第一の問題としては、住宅環境の変化である。日本のように湿度の高い気候風土のところに欧風家屋が普及した事で室内の湿度が増加し、また絨毯などの調度品の普及に伴いダニやカビが増加しアレルギーを引き起こしている。第二の問題としては、食生活の変化である。飽食の時代と言われる様に豊かな食生活を送っている現代、高蛋白、高脂肪の食事を多く取るようになりました。特に蛋白質の固まりである卵(鶏卵)の影響は大きく、胎児期に母親が卵を摂取する事により卵アレルギーを作ってしまうのです。その卵アレルギーがアレルギーマーチのスターターとなり次から次へと色々な物に対してアレルギーを引き起こしてしまう事が多いのです。現代の食事は脂肪分の摂取量が非常に多くなっています。植物油脂に含まれるリノール酸は体に入るとアレルギー症状を起こすロイコトリエンになるのです。脂肪分を多く取ると食事が非常に美味しくなりますがその反面アレルギー症状を強く引き起こしてしまうのです。また最近の食物には多くの防腐剤や人工着色料が含まれています。これらもアレルギーを引き起こす原因となる事があります。第三の問題としては、我々現代人の行動様式の変化です。運動不足だったり、不規則な生活をしていたり、無理な生活をしていたり、自然にさからって過度の冷暖房をしていたりと体調を乱しやすい生活を送っているのです。体調が乱れるとアレルギー症状が強く起きると言われています。第四の問題としては、精神的ストレスの増加です。現代は大人も子供もストレスを多く感じて生活をしております。ストレスは体調を乱す原因にもなりうるし、同時に全てのアレルギー疾患の原因になります。第五の問題としては、公害喘息に代表される環境汚染です。空気中の窒素酸化物が喘息を悪化させる事は間違いのない事実です。最近ではストーブなどによる室内の窒素酸化物の増加が問題視されております。またディーゼルガソリン車の排気ガスが花粉症の成立に大きく関与していると言われており、自動車公害も問題視されております。
 我々は快適で過ごしやすい近代的な生活を手に入れる事が出来ました。しかしその代償としてアレルギー疾患の増加を引き起こしてしまったのです。また同時に成人病に代表される現代病(ガンもはいるかもしれない)をも引き起こしているのです。この増加の一途をたどっているアレルギー疾患の治療の近道は欧米化された近代生活から賢く決別する事に他なりません。また人間はあくまでも動物であることを忘れてはいけません。動物は長い地球の歴史の時間から、自然に合わせて体を調節する事を獲得してきました。その為自然に逆らった生活をすると体の調節が狂ってしまうのです。暖房や冷房を使い過ぎたり、気候風土に逆らった住居で生活するのは問題です。人間は夜行性の動物ではないので昼夜逆転した生活をすれば体調が乱れます。自然界の動物は絶対に自ら無理をする事はしません。無理をするのは人間だけです。我々は挙げれば限りのないほど問題のある生活を送っているのです。
 文明が高度になりすぎるほど動物本来の本性がうしなわれ体のちょうせつ機構が狂い病的になっていく。アレルギー疾患の増加はその一つのあらわれと思われます。アレルギー疾患を通して、文明の進歩が人類にとってなにを意味するのかを考え直す必要があるように思われます。楽すぎる生活は危険なのです。



  


 喘息は出来るだけ発作を起こさせないようにコントロールする事が大切です。そのためには喘息の状態を何時も把握しておかなくてはなりません。発作の程度がどの程度なのか喘息発作がおき易い状態かどうかを知る必要があります。いわゆる自己管理をすると言う事です。そこで、ピークフローメーターを用いた自己管理を勧めます。
 ピークフローメーターとは吹く息の強さを調べる肺機能測定器です。喘息発作が起こると息を吐く事が出来にくくなります。そこで吹く息の強さをみることによって喘息の程度を知る事が出来ます。平常時の80%以上あれば軽度、平常時の60〜80%が中等度、平常時の60%以下が重度です。
 ピークフローメーターの値が80%以下になったら要注意(イエローゾーン)です。喘息薬を使用し無理しないようにしましょう。60%以下になったら危険信号(レッドゾーン)です。早めに受診し吸入や点滴などの手当てを受けて下さい。

              




  

 リノール酸は動物に必須なものです。不足すると成長が止まって子供が生まれなくなります。また毛が抜けて皮膚が病気になったりもします。リノール酸を取ると血漿コレステロール値が下がります。このような訳で「リノール酸は健康に良い」と言う事になり、リノール酸を多く含んだ植物油を積極的に取るようになりました。また高度成長の時代に伴い、脂肪の摂取量が増えました。どんなに味気ない物でもマヨネーズやドレッシングをかけると美味しくなる様に、脂肪分が30%以上になると美味しくなるのです。この様に油の摂取量が増えるに従いリノール酸の摂取量も増加してきているのです。現在我々はリノール酸の必要量(1〜2g/日)の10倍以上を摂取しているのです。
 しかし最近の研究によりリノール酸が多くの慢性疾患に関わっている事が解ってきました。リノール酸がアレルギー症状を強く起こさせる事。リノール酸をあまり摂取せず、αリノレン酸という油を多く摂取する民族に脳梗塞や心筋梗塞などの病気が驚くほど少ない事。ねずみの実験でもリノール酸とαリノレン酸では、αリノレン酸を与えた方が血圧を下げやすい事が解りました。老人ボケにもリノール酸が関与しているようです。リノール酸を多く含む植物油を多くとり過ぎないように注意しましょう。